遅ればせながら、怪物を見た。
以下、ネタバレを含む感想。考察でも何でもない、ただの感想。
早めに見た人の呟きで、先入観なしに見た方がいいとのことだったので、ひたすら情報は見ないようにしていた。まぁ呟いている人も私のTLにはいなかったけれど。
予告とキービジュアルと、あとたまたま目にした鬱映画を態々見に行くのは…的な話。
そしてクィアパルム賞をとったということ。
日頃鬱映画を好んで見に行っているような人間だし、予告とキービジュアルでもそうだと思っていた。
田舎のさびれた村かなんかできっと何かが起こる。その程度。
でもそれすらも穿った先入観だった。
母目線、教師目線、そして子供目線。
目線が変わると世界が変わる。
母目線の時点で、やばい学校だやばい先生たちだと思っていた。
ただ、母親がかける湊君への言葉。
普通に幸せになってほしい。
全然話は見えていないけど、この時点でこの子にとって期待の言葉ではないし、下手したら呪いの言葉なのではないかと思った。
実際そのあと車から飛び降りたし、ずっと何かに悩んでいるみたいだったし。
正直、自分で髪を切ってシャワーを浴びていたときは、先生にいたずらでもされたのでは……と余計な心配をした。本当に要らぬ心配だったしそんなことがなくてよかった。
女子生徒に手を引かれている時にも何か生徒によくないことをしているのでは……ともう私が一番のモンペである。子供を産んではないけれど、大人の犠牲になる子供はとにかく見たくない。
視点は先生へと変わる。
なんだこの先生、何も悪いことはしていない。ガールズバーにだって行っていない(行ってても別にいいけど)。淋しい人でもない。あの火事を彼女と眺めてただけ。
寧ろ先生の視点からでは加害者に見える、湊君へも理解を示そうとしていた。ように見える。
校長室で飴舐めてたのはちょっとどうかと思ったけど、彼女とのやり取りを見ていたらまぁ納得はした。
この先生も、やっていないことを押し付けられて、学校の犠牲者なくらい。
まぁ母親視点を経ているので、ここまで見ていると行動がこわいのは校長かな。
あと依里君の父親もあんまりいい感じには見えないけど。
ここまで、細かいエピソードが多く、なかなかに話が散らばっていたのでちょっと整理がつかなくて午後もう一度見ようかと思ったくらい。
けれど子供の視点で世界は一変する。
この子達、いじめの被害者と加害者ではない。
ふたりの時だけ話しているのを見たあたりから、もうずっと泣いていた。
依里君は、勉強ができるとかそういうのではなく賢い子なんだと思う。
母親視点の時は小5で平仮名を鏡文字で書くなんて、と思っていたのに。
父親とクラスの子の加害にも、諦めているようにも見えるくらい。
すべてを疑って見ていた自分が恥ずかしいくらい、湊君と依里君が綺麗に見えた。
物語を不穏に思わせるためのような管楽器の音が、校長先生と湊君の言えないことを込めた音色だったのは驚いた。
少しだけ、校長先生の見方が変わった。先生がついた嘘、に関しては明らかではないと思うけど。
このふたりのことをどうこう書いてもなんかいけないと思うくらい、自分の気持ちに素直なままで大人になってほしいと思った。
最後どうなったのか、なんて、別にみていた友達に言及されるまで本当に何も考えていなくて、この子達、幸せになってくれないかな……なんてことしか考えていなかった。
あんなに先入観に囚われない、と思っていたのに子供視点になるまですべて先入観の塊だった。怪物なんていないと見終わって思ったけど、「怪物だーれだ」すら、ミスリードでは、と思った。
それかすべてを疑ってかかった私が一番の怪物だったのかもしれない。
最後に一番しょーもないことを言うけど、とにかく依里君が可愛かった。
依里君そのものも、演技も表情も、着ている服装も、すべてが可愛かった。
私が小学生の頃なんて男の子みんなJリーグのジャージ着てた……あんなおしゃれな子いなかった。